認知症
- 2025.02.18
- 物忘れ、認知症、パーキンソン病
大阪梅田の漢方薬局「人間医学社」阪急梅田駅より徒歩1分
CONSULTATION
認知症について、テレビや雑誌などでさまざまな説やアドバイスが飛び交っています。
仮説が多く出るといことは、未だ確たるものがないということの証でもあります。
そんな中、いま最も話題になっているのが「アルツハイマー型認知症」です。原因は脳で作られるタンパク質の一種「アミロイドβ」が
脳内に溜まることだとされていますが、これもまだはっきりしたものではありません。
アミロイドβがアルツハイマー型認知症の人の脳内にたくさん沈着しているのは、確かですが、それが認知症を引き起こす原因なのか、
それとも結果なのかは、まだわかっていません。
「認知症」や以前使われていた「痴呆症」は、病名ではありません。認知機能が低下した状態のことを認知症と呼んでいるのです。
認知機能とは、人間が生きていくためには必要な、さまざまな脳の働きを総称しています。その一部が障害された結果、
日常生活に支障が出て、誰かの助けがないと社会生活が営めない状態を、認知症と呼びます。
誰でも歳をとれば認知機能が低下するものです。
若い頃はテレビや映画に出てくる芸能人の名前がすぐに頭に出てきていたのが、すぐに名前を思い出せなくなり、
後日急にフッと思い出すようになります。
こんな事はまだ序の口で、そのうち「そんな映画をみたかな?」というようになり、挙句の果てには「そんな映画は見たこともない」と言うようになります。
こういったケースも、日常生活に支障がなければ、年相応の物忘れで片付けられるでしょうが、日常生活に支障が出てきて、
誰かの助けがないと社会生活が営めない状態になれば、認知症と捉えられます。
認知症にはさまざまな型があり、「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」「血管性認知症」の4つが主に挙げられます。
そのほか、低酸素脳症、低血糖症、脱水症、ビタミンB12欠乏症、甲状腺機能低下症、パーキンソン病、脳梗塞、脳出血など、
認知機能が低下する病気は多く、一説では200~300種類もあるといわれています。
認知症は、主なものだけで4つの型があると述べましたが、それぞれの型によって、使われる薬や対策も異なります。
場合によっては、間違った治療により、かえって症状が悪化することもあるようです。
主な型の特徴をしっかりと把握しておくことが大切です。
レビー小体型認知症は、「レビー小体」と呼ばれるタンパク質のかたまりが脳の大脳皮質に多くできることで、認知機能が低下する病気です。
アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症に次いで患者が多く、認知症全体の約4%を占めるといわれています。
特徴的な症状の一つに、「幻視」が挙げられます。アリなど昆虫や動物、人間が、本当にそこにいるかのようにはっきりと動いて見えるため、
本人にとっては、それが現実なのか幻視なのか、さっぱり区別がつかないようです。
レビー小体は、全身の神経細胞に発生します。大脳を支える脳幹に多くできた場合は、パーキンソン病となります。
レビー小体型認知症とパーキンソン病は、とても近い病気だと考えられています。
実際、レビー小体型認知症の人は幻視だけでなく、手足の震えや筋肉のこわばりなど、パーキンソン病に似た症状もよく見られるようです。
レビー小体型認知症の特徴的な症状に、「レム睡眠行動障害」があります。睡眠中に大声寝言を言ったり、暴力的な行動をとったりします。
そのほか、「過敏症」も特徴の一つです。医療法人社団裕和会理事長の長尾和宏医師は「レビー小体型認知症は薬に過敏に反応しやすいため、
薬の使い方には微妙なさじ加減が欠かせない」といわれています。
薬や新型コロナなどのワクチンに対しても過敏症を示しやすく、薬が効きすぎて副作用が出やすいというのです。
名古屋フォレストクリニック院長の河野和彦先生は、レビー小体型認知症の簡易診断ツール「レビースコア」を考案されました。
最大16点中3点以上になると、レビー小体型認知症の可能性があります。
長尾医師は「レビースコアの高い人は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質にも過敏性を示し、新型コロナへの感染やワクチン接種で、
認知機能を悪化させやすい印象がある」と警告されています。
( )は満点、迷ったら半分を加点してみてください。
1.市販の風邪薬などが効きすぎる(抗生剤薬疹を除く)(2点)
2.急に意識がなくなることがある(てんかんを除く)(1点)
3.人がいるような気がする(1点)子供や小動物が見える(2点)
4.就寝中に寝言を言う(1点)叫ぶ(2点)
5.食事中にむせる(1点)
6.趣味もなく、生真面目な性格(1点)
7.昼間もかなりウトウトする(1点)寝てしまうことがある(2点)
8.手足の震えがある(1点)
9.ひじを曲げる時に歯車のような抵抗がある(2点)鉛を曲げるような抵抗がある(1点)最初だけ少し抵抗感がる(1点)
10. 体が左右どちらかに傾いている(2点)
一般に、パーキンソン病ではドーパミンが不足するため、筋肉がこわばり、小刻み歩行などの症状が出るとされています。
一方、アルツハイマー型認知症では、細胞同士の連絡を手助けする神経伝達物質のアセチルコリンが不足するため、
記憶力が衰えて認知機能が低下するとされています。
そして、ドーパミンとアセチルコリンの両方が低下するのが、レビー小体型認知症です。
ドーパミンとアセチルコリンは、ともに神経伝達物質ですが、脳内では拮抗した関係にあります。
一方が増えれば、もう一方は相対的に減るという関係です。
レビー小体型認知症の治療には、ドーパミンとアセチルコリンの両方を増やすために、
パーキンソン治療薬とアルツハイマー治療薬(アリセプトなど)を処方する必要があります。
ところがレビー小体型認知症には薬剤の過敏症があるため、どちらの薬も規定量より減らして用いなければなりません。
パーキンソン病やアルツハイマー型認知症には、薬剤過敏性はありませんが、レビー小体型認知症では、極めて微量の薬でも効果が大きく出ます。
レビースコアを考案された河野医師によると、通常の投与量では薬が効きすぎて、副作用が強く出るということです。
もう一つ注意点があります。脳内では、ドーパミンとアセチルコリンが拮抗関係にあるという点です。
河野医師によると、レビー小体型認知症をアルツハイマー型認知症と誤診して、アルツハイマー治療薬を規定通りの量で処方してしまうと、
薬が効きすぎるだけでなく、ドーパミンが不足して歩けなくなり、ひどい場合は寝たきりになることもあるというのです。
レビー小体型認知症には、いくつかのタイプがあります。
最初の4~5年はパーキンソン症状しか現れず、次第に認知症が加わっていくタイプは、パーキンソンタイプと呼ばれています。
このタイプは、レビー小体が脳幹から大脳皮質に向かって徐々に広がっていくため、最初はパーキンソン症状しか現れません。
このため、パーキンソン病に誤診されやすいという特徴があります。
また、最初は認知症の症状や幻視しか目立たず、その後徐々にパーキンソン症状が出てくるタイプは、アルツハイマータイプと呼ばれます。
この場合は、アルツハイマー型認知症と誤診されやすいということです。
こうした誤診を避けて患者さんを守るためにも、河野医師は「医師だけに任せず、患者さんのご家族も、そして介護関係者も、
レビー小体型認知症の知識を持っていることが欠かせません」とアドバイスされています。
繰り返しますが、レビー小体型認知症では、極めて微量でも薬が効くといわれています。
そのため通常の投与量では薬が効きすぎて副作用が強く出てしまいます。
その点、漢方薬は安全性が高く、新薬のような副作用はありません。
成分が微量であるという点も見逃せないと思います。
東京都にある百済診療所院長の丁宗鐵先生は、「漢方薬はレビー小体型認知症によく効きます」と述べられています。
たとえば、「抑肝散」という子供のチック症状などによく使われる漢方薬があります。
これを、中高年のレビー小体型認知症に用いるわけです。
「患者さんの症状も落ち着いていくため、ご家族も安心して寝られるようになります」といわれています。
前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉と側頭葉が特に萎縮するタイプの認知症です。
脳のCTを撮ると、脳の前側と横側で、骨と脳の間に隙間が空いていることが観察されます。
この型の認知症の場合、物忘れというよりも、主に性格や行動の変化として症状が現れます。
前頭葉は、人間の理性の中枢といわれています。
この場所が萎縮して機能が低下すると、いろいろな欲望の抑制が効きにくくなります。
暴言や暴力、あるいは万引きや放火といった反社会的な行為をするようになったり、まるでスイッチが入ったかのように突然怒りだしたりします。
また、人前で横柄な態度をとったり、話の最中に立ち去ったりするなど、自分本位な行動をとるようになります。
そのほか、毎日同じ時刻に同じ場所に行ったり、同じ文章を書き続けたりするなど、同じ行動を繰り返すという傾向もあります。
甘いものばかり食べたり、他人のおかずを取ったりするなど、食行動の幼児化も見られます。
側頭葉は、言語の中枢とされています。
この部分が萎縮して機能が低下すると、言葉がわからなくなり、次第に会話が難しくなってきます。
知っている言葉を聞いても、意味が理解できなくなります。
本人にしてみれば、まるでまったく知らない言葉で話しかけられているようで、強いストレスを感じるようです。
前頭側頭型認知症は、抑制が効かないという前頭葉症状が目立つタイプと、言葉が通じないという側頭葉症状が目立つタイプに分かれます。
前頭葉症状が出ている場合は、タンパク質が変性して塊化したピック球と呼ばれるものが、大脳皮質に出現します。
これを「ピック病」といいます。
また側頭葉症状が出ている場合は、「意味性認知症」と呼ばれます。
これらはどちらかの症状が見られる場合もあれば、両方の症状が見られる場合もあるようです。
名古屋フォレストクリニック院長の河野和彦医師は、「ピック病患者がアルツハイマー型認知症と誤診されると、アルツハイマー型認知症の治療薬であるアリセプトを処方される。アリセプトを服用すると暴力行為が出て危険な事態を招くため、注意しなければならない」と話されています。
2022年2月、ハリウッド映画「ダイハード」で主演を務めた、俳優のブルース・ウィルスさんが前頭側頭型認知症と診断されたことを、
ご家族が発表されました。
このことで、初めて前頭側頭型認知症を知ったという方も多いのではないでしょうか。
ブルース・ウィルスさんは、「失語症」と診断されました。失語症は、前頭側頭型認知症の症状の一つです。
「話す」、「読む」、「書く」、「聞く」などの言語コミュニケーションがうまくできなくなります。
前頭側頭型認知症は、60歳未満で最も多い認知症のタイプです。その原因も治療法も、存在しないとされています。
レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症、そしてアルツハイマー型認知症は、何らかの原因で脳の神経細胞が壊れて減少し、脳が変性・萎縮していく病気です。
そのため、「神経変性疾患」と呼ばれています。
対して脳血管性認知症は、病気や外傷の影響を受けて発症する二次性の認知症です。主な原因は、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血といった脳血管障害で、
最も多いのが脳梗塞とされています。
脳血管性認知症の特徴として、「感情失禁」が挙げられます。大したことがないにもかかわらず、すぐに泣き出してしまうという症状です。
病識(自分がおかしいことの認識)が残っている点も、特徴の一つです。特に、高血圧を持つ60~70代の男性に多いとされています。
河野医師は「誰しも中年以降になると涙もろくなるが、60歳を過ぎて、すぐに泣き出したり怒りっぽくなったりするなど、
感情の起伏が激しいと感じたら、脳血管性認知症が否定できない」と述べられています。
脳血管性認知症の原因となる脳梗塞の中にも、いろいろな種類があります。脳の血管で梗塞が起きているのに自覚症状が出ていない場合、
「隠れ脳梗塞」と呼ばれます。60代では、約8割の人が隠れ脳梗塞を持っているといわれています。
脳梗塞の中でも問題とされるのが、「多発性脳梗塞(ラクナ梗塞)」です。小さな血管が詰まって微小な脳梗塞が起こるため、
ダメージを受ける部分が少なく、その一つ一つは気づかれないことが多いです。
これを放っておくと、10年以上経つ頃には、高い確率で認知機能が低下していきます。
なお、当店でも、こうした悩み相談のお客様は数多くいらしています。
薬剤師として、こうしたご相談をうけたまわります。 ぜひお問合せください。
株式会社人間医学社 代表取締役
平成16年薬科大学卒業 平成17年薬剤師免許取得