ルテインとゼアキサンチンについて
- 2025.06.18
- 目の病気
大阪梅田の漢方薬局「人間医学社」阪急梅田駅より徒歩1分
CONSULTATION
近年、アメリカでは加齢に伴って失明する患者さんが増えており、大きな問題になっています。
その最大の原因は加齢黄斑変性症です。
日本でも最近、増えてきています。
加齢黄斑変性症の予防・改善に有効な栄養成分だといわれているのがルテインとゼアキサンチンです。
植物の中ではルテインとゼアキサンチンは常に一緒に存在しています。
失明すると本人が不自由するのはもちろん、介添えなど周囲の人たちに負担も増えます。
また、目の不自由な人のために道路を整備するなど、社会資本も必要になります。
そこで、アメリカ政府は予算を出して、加齢黄斑変性症の原因究明と治療確立のための一大プロジェクトを、
ハーバード大学の研究チームを中心に開始しました。
このプロジェクトの中で、研究チームが行った興味深い研究があります。
それは加齢黄斑変性で亡くなった患者さんの目と、視力が正常でなくなった人の目とを比較した研究です。
その結果、加齢黄斑変性症の患者さんの目には、視力が正常な人にくらべて、
ある成分が1/3~1/5しかないことがわかりました。
それがルテインとゼアキサンチンだったのです。
黄斑部というのは網膜の中心部にあって、視野の中心を映し出す大切な部分です。
ここにルテインとゼアキサンチンが多く存在するので、黄斑部は黄色をしています。
黄斑変性症は、この黄斑部が紫外線などの有害光線や活性酸素などによって損傷をうけて、
視力が障害される病気です。
高齢者に多いので、加齢黄斑変性症とも呼ばれています。
症状は、初期の内は視野の中心が見えにくかったり、物が歪んで見える、暗く見える、
小さく見えるなどですが、進行すると視力が極端に低下し、最悪の場合失明に至ります。
米国ハーバード大学の研究で、加齢黄斑変性症の患者さんの目にはルテインとゼアキサンチンが減少していることが
わかったので、研究チームは天然物から抽出したルテインとゼアキサンチンを加齢黄斑変性症の患者に投与し、
その効果を試してみました。
その結果、約三ヶ月でほとんどの人の自覚できるほどの改善効果があることがわかりました。
これは一大発見でした。
植物に黄~橙~赤色などの色素が含まれています。
これらを総称してカロテノイドといいます。
よく知られているのはβ-カロテンやα-カロテン(ニンジンの橙色色素)リコペン(トマトの赤色色素)などですが、
ルテインとゼアキサンチンもカロテノイドの一種で、植物に含まれる黄色の色素です。
ルテインとゼアキサンチンは野菜や果物に広く含まれていますが、特にほうれん草やブロッコリーには多く含まれています。
これらの野菜は緑色に見えますが、それはルテインの黄色が緑色の葉緑素に隠れているからです。
収穫して日にちが経つと、ほうれん草が黄色っぽくなってきます。
あの黄色はルテインの色です。
ルテインとゼアキサンチンが最もよく見えられるのは秋の紅葉です。
秋になって太陽光線が弱くなると葉緑素が分解され、その下からきれいな黄色が現れてきます。
あれがルテインとゼアキサンチンです。
ルテインとゼアキサンチンは、植物界では平均して五対一の割合で存在しているといわれています。
では、なぜ植物にはルテインとゼアキサンチンがあるのでしょうか。
端的にいいますと、これらがないと植物は生きていけないからです。
植物は葉緑体で、空気中の二酸化炭素と根から吸収した水を元に、太陽エネルギーを使って、
自ら必要な栄養素を作っています(光合成)。
ところが、太陽光線には紫外線のほか、青色光のような有害な光線も含まれています。
太陽光の中でも青色光は、人の目を変性させるほどエネルギーが強いといわれています。
ところがルテインとゼアキサンチンは、植物の中で葉緑素に寄り添うように存在し、
植物にとって有害なこれらの光線を吸収し、葉緑素を守っていることがわかりました。
アメリカの医療研究で、加齢黄斑変性症のほか白内障や緑内障の患者さんの目には、
目が健康な人よりルテインとゼアキサンチンが少ないことがわかってきたのですが、
さらに詳しい研究が続けられた結果、これらの栄養成分は人の目では水晶体と網膜に多く蓄積されていて、
組織を紫外線などの有害な光線から守っていることがわかってきました。
ルテインもゼアキサンチンも人体内では作ることができませんから、食物から摂取しなければならない成分です。
年をとると白内障や緑内障、加齢黄斑変性症などの目の病気が増えてきます。
特に45歳を過ぎた頃から増えてくるのは、これらの栄養成分の摂取が不足しているからだと考えられます。
食べ物から摂取したルテイン、ゼアキサンチンは吸収された後、目に集められて目の健康を守っているのです。
最近の研究によると、目の中のルテインとゼアキサンチンの割合も植物と同様に、約五対一であることがわかっています。
考えてみると、植物が自分の命を守るために作ったルテインとゼアキサンチンが、人間の目を守るために必須だというのは
不思議な気がします。
これも神の配剤ということなのでしょう。
株式会社人間医学社 代表取締役
平成16年薬科大学卒業 平成17年薬剤師免許取得