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幻覚|月刊「人間医学」4月号より

2019年3月25日

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 高齢になるにしたがって脳の活動が衰えると思っているふしがあるが、じっさいはその反対で、高齢になるにしたがって脳内部の活動レベルは高くなっていくそうだ。年を経るにつれ、これまではセーブしていたタガが外れ、脳の神経細胞の自発活動が表に現われて出てくると考えればよい、というのは東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授だ。
 というのも、高齢者では幻覚を見ることが多くなるからである。とくに病気というわけでなく、健康な人でも自然に見えているという。
 そもそも人間は、網膜に届いた光の信号を視神経を介して大脳皮質に送っている。そこには光そのものが届いているわけではなく、デジタル化された電気パルスが入ってくるだけで、それを「見え」として解釈しているに過ぎないからである。それ故、自分が見ているように他の人にも見えているのかどうかは分からないわけだ。
 じつは目から入ってくる情報は、視覚情報の全体からみればごく一部で、大脳皮質の中の第一次視覚野の97%以上は目で見ているものとは関係ない情報を処理しているとされている。それは網膜から上がってくる情報だけでは詳細が不足していて「見え」ないので、これまでの経験などに基づいて、脳の内部から情報を補完することで、ようやく「見え」が成立するというわけだ。であれば、それぞれの経験の差が「見え」に影響することになる。
 赤ちゃんを見ていると、誰もいない方向を見て笑ったり声を上げたりすることがある。大人には見えない何かが見えているのかもしれない。夢と現実の区別がうまくつかない状態が、物心がつくようになると、幻覚を見なくなると考えられている。
 赤ちゃんは生まれてからの視覚経験に乏しい。成長するにつれて「こういう脳内の自発活動は意識に上げちゃいけないんだな」と学習し、子どもは次第におかしな幻覚は見なくなる、と池谷教授は説明されている。余計な情報が意識に上がってこないようにセーブするメカニズムが我々には備わっているのだろう。
 ところが高齢になると、それまでセーブしていたものが外れやすくなってくるのか、幻覚が見えがちとなってくるようだ。自己をモニタリングして正常性を監視するシステムが機能低下するわけである。機能低下を防ぐには社会性というものが必要とされる。
 池谷教授はいう。人間は基本的に社会性を重視する生き物で、人と交わることに適した脳の発達をしてきている。独居老人やネット依存で自宅に引きこもる若者にはおかしなことが起こるのは不思議なことではない。まさに社会交流は脳の矯正となるのである。
  
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