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思い込み|月刊「人間医学」2月号より

2016年1月25日

9医療の世界ではプラシボ効果というものが必ずついて回る。
モルヒネについて有名な研究がある。手術をした直後の患者さん一六二人に痛みを抑える目的でモルヒネを投与したところ、
七五%の患者が「十分に痛みがとれた」と答えたのである。次に同じ一六二人に「麻薬を使う」と言いながら単なる生理的食塩水を投与した。
その結果は三五%の人が「十分に痛みがとれた」と答えたのである。
 プラシボ効果とは、医学的な作用がないにもかかわらず、受ける人が「効果がある」と信じることによって生まれる治療作用のことだ。
 信じるということと近いかもしれないが、思い込みが痛みの予後を左右することがある。奥野祐次医師が紹介されている例をとりあげてみたい。
 それは一九九六年に『ランセット』誌に掲載されたシュラッダーという脳外科医たちの研究だ。
旧ソビエトから独立したばかりの国、リトアニアにおいて「社会的常識や文化が痛みにどの程度影響するか」というテーマで調査を行なったものである。
 当時のリトアニアでは、ほとんどの国民は自動車保険に加入しておらず、しかも「ムチ打ち」という病気があることを知らない人がほとんどで、
医者も「ムチ打ち」を念頭において診察していないという情況だった。
 これを利用して「ムチ打ち」を認知していない国では交通事故のあとに頭痛や首の痛みが長引く人はどれくらいいるのだろう、
という調査をしたのである。
 二つのグループに分け、一つのグループは一~三年前に交通事故で後方から追突された経験のある人二〇二人、もう一方のグループは年齢や性別などを一致させた人たちで、
交通事故にあったことがないという二〇二人だ。
結果は、驚くべきことに頭部痛や頭痛の割合は二つのグループの間で差がなかったのである。もちろん事故直後には半分近くの人が首の痛みや頭痛を訴えたのだが、
痛みの持続期間が極端に短いことが明らかとなった。
 ここから導き出されることの一つは、我々は「こうなるはずだ」という思い込みによって痛みを長引かせることがあるということだ。
これは負の効果ということで”ノセボ効果”と呼ばれている。もう一つは、利益によって痛みの訴えが長引いているという可能性である。
自動車保険に入っていないリトアニアの人にとっては、痛みを訴えても何の利益もないのだが、自動車保険に入っている国では痛みを訴えなかったら損をするという気持ちが働くのは否めない。
さらには痛みを訴えることで「周りから注意を向けてもらえる」という心理的な利益もある。
 人が感じる痛みというのは複雑である。
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